不壊の槍は折られましたが、何か?

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読売日本交響楽団第543回サントリー名曲シリーズ

19時〜 サントリーホール

  1. メンデルスゾーン:序曲《フィンガルの洞窟》op.26
  2. ショーソン:愛と海の詩op.19
  3. ワーグナー:歌劇《さまよえるオランダ人》序曲
  4. ドビュッシー:海

 カンブルランらしい、研ぎ澄まされて透き通った響き、そしてハーモニーを堪能しました。もっと尖ってるかと思ったら意外とソフトな音を出していて、意外の念に打たれましたし、特にメンデルスゾーンワーグナーは、リズムが重めでテンポもこの指揮者にしては遅めだったんじゃないかな。弦のざわめきを強調していたように聴こえましたが、これは演奏会通してのテーマである「海」を強調するためにおこなっていたんじゃないかな、と思わされました。弦のうねりを海に見立てていたような気がします(俺が、なのか、カンブルランが、なのかはよくわからない)。非コンセプチュアルな演奏会でこれらの曲を演奏した場合、ちょっと様式が変わるんじゃないかな、とすら思いましたが、穿ち過ぎかしら。
 一方、フランスの曲2曲は、弦のうねりによる海の描写には拘っていないように思いました。特にドビュッシーは、そこを強調しなくても最初から最後まで海の情感は出せるさ、といったところでしょうか。メンデルスゾーンワーグナーにも言えることですが、この人の指揮はとにかく新鮮なのね。一昨日にベルリン・フィル聴いた所なうえに、そもそも《海》はベルリン・フィルの実演に接したこともあるので、さすがに音圧は劣後してますが、波浪の迫力ときらめきは、十全に表現されていたと思います。ニュアンスも豊か、それはショーソンでも言えること。正直オケが独唱よりも雄弁だったように思います。いや林美智子さんも素敵だったけれども。
 毎回思いますが、読響は素晴らしい常任指揮者を得ましたね。ぜひぜひ任期を延長していただきたい。オーケストラとの関係も良好っぽいし、OKですよねカンブルラン先生?