不壊の槍は折られましたが、何か?

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読売日本交響楽団第7回オペラシティ・マチネーシリーズ マエストロ・セレクション・ポピュラー・ピーシーズ

14時〜 東京オペラシティコンサートホール

  1. ウェーバー:歌劇《オベロン》序曲
  2. シューベルト交響曲第7番ロ短調D.759《未完成》
  3. ワーグナー:楽劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》から第1幕への前奏曲
  4. R.シュトラウス交響詩ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》op.28

 ただの名曲演奏会(しかも短い! 演奏終了は15時30分でした)、という感じの曲目ですが、実際は年代順に曲目が並んでおり、独墺のロマン派がどう発展して来たかをはっきり見せる。交響曲交響詩、そしてオペラの序曲を含むことで、絶対音楽標題音楽の違いも見せる、かなりよく考えられたプログラムと言えるわけです。さて演奏。ウェーバーは、表現の焦点がばっちり合うところまでは行かなかったようですが、これからオペラが始まるんだというワクワク感は十分に出ていて楽しめました。カンブルランは読響から軽やかな響きを引き出そうとしており、十全には成功していませんでしたが意はしっかり汲み取れる範囲内でした。次のシューベルトは、強い音を出す場面でアクセントやリズムを強調する独特の表情を付けていましたが、オケが鋭敏に反応していたとは言い切れませんでした。ただしその他の部分では(意外にも?)繊細にして叙情的な歌に溢れており、仄暗くたゆとう響きを楽しみました。後半はワーグナーがオケの力全開で、表情付けもカラリと晴れ上がっており、爽快な演奏となっていたように思います。これが会場の受けも一番良かったかな。《ティル》も同傾向の演奏でありましたが、繊細な叙情美にも気を配っており、ティルの死の場面や女性に言い寄る場面などでハッとするほど美しい瞬間(その美しさは、暗いそれでしたが)がありいたく感心。カンブルランと読響のコンビは益々好調であります。