不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

サルビアホール・クァルテット・シリーズvol.5

19時〜 サルビアホール

  1. チャイコフスキー弦楽四重奏曲第1番ニ長調op.11
  2. ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲第7番嬰ヘ短調op.108
  3. スメタナ弦楽四重奏曲第1番ホ短調《わが生涯より》
  4. (アンコール)ドヴォルザーク弦楽四重奏曲第12番ヘ長調op.96《アメリカ》より第二楽章
  • パーヴェル・ハース・クァルテット(弦楽四重奏
    • ヴェロニカ・ヤルツコヴァ(1st ヴァイオリン)
    • エヴァ・カロヴァ(2nd ヴァイオリン)
    • パヴェル・ニクル(ヴィオラ
    • ペテル・ヤルシェク(チェロ)

 素晴らしい四重奏団! 音そのものは恐らく故意にそれほど洗練させず、土俗的なまでの迫力を出していましたが、アンサンブルの技術的精度はほぼ完璧。豊潤な音色とガッチリした構成感、そして強い緊張感をもって、どの曲も極めて劇的かつ端正に仕上げておりました。解釈そのものは極めて真っ当であり、音の劇性そのもので曲を劇的に仕上げていた、と申し上げてよろしいでしょう。そして、音そのものの表現力も半端なくて、チェコ人四人(男女比半々)だけが弾いているに過ぎないのに、フル編成のオーケストラによる下手な演奏を優に凌駕するほど、情報量の多い演奏であったと思います。圧倒されました。スメタナの《わが生涯より》は「第三楽章までは順調なスメタナの人生を表していて、フィナーレのコーダ前の休止が失聴を表している」とか何とか解説されることが多いですが、今日の演奏は、そんなことは嘘八百と言わんばかりに、第一楽章から第三楽章にかけても、波瀾万丈の仕上がりを見せていました。また、チャイコフスーがロシア風ではなく微妙にドヴォルザークっぽく聞こえたり、ショスタコーヴィチが(シリアスではあるけれど)さほど絶望的な音楽に聞こえず、バルトークのように高貴な音楽に聞こえたことは、個人的にはとても印象的でした。
 いずれにせよ、この素晴らしい団体をわずか100席のホールで聴けたのは、クラシック音楽ファン冥利に尽きる贅沢であったと思います。関係各位には深く感謝したい。
 なお、アンコール時はヴィオラが「Dvorak」と言っただけ。アンコール掲示もなかった(はず)ゆえ、ここに掲げたアンコール曲目は帰宅後録音で聴いて私がこれだと判断したものです。正直あんまり自信ない。《アメリカ》のLentoじゃないと思うんだよなあ。→《アメリカ》のLentoでした。俺の耳はカスだった模様です。