不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

第30回横浜市招待国際ピアノ演奏会 第2部

18時〜 横浜みなとみらいホール 小ホール

  1. グバイドゥーリナシャコンヌ
  2. D.スカルラッティソナタ ハ長調K.406/嬰ハ短調K.247/ト長調K.427
  3. フランク:前奏曲、コラールとフーガ
  4. シューマン幻想曲ハ長調op.17
  5. ラヴェル:ラ・ヴァルス
  6. ルトスワフスキパガニーニの主題による変奏曲(デュオ)
  • 奥村友美(ピアノ)
  • アレクサンダー・ムトゥツキン(ピアノ)

 第1部とは異なって空席が目立ちます。遅めに来た人が多かったのか、17時35分に会場入りした時は、「これヤバイんじゃね」ぐらいに客がいなかったんですが、最終的には何とか見れる客席になってました。
 前半の奥村友美は、日本人女性ピアニストでは典型的なタイプ、つまり解釈は穏健、出す音も穏健、という感じの演奏者でありました。ただしグバイドゥリーナとルトスワフスキ弾けてるように、「お嬢さんピアニスト」では全くなく、腕は相当に立ちます。そうなるとどうなるか。ヒューマンで真摯な演奏が、説得力豊かな「普通の」解釈のもと、素晴らしい技巧で展開されることになるのね。日本人演奏家は個性が際立ってないとか、自分の気持ちを音にぶつけないとか色々言われますが、こういう演奏を聴くと、日本の音楽教育のあり方も間違いきってはいないように思います。
 後半のムトゥツキンは、対照的に「情熱的に弾いてナンボっつってんだろダラス!」の世界で笑った。本日の演奏会は全員YAMAHAを弾いてたんですが、ムトゥツキンは「そういうのはスタンウェイでやって」というような強烈な演奏を展開。音が一番でかかったが、反面、四人中で一番小さい音も出していて、只者ではない感満載でありました。なお情熱的に弾き飛ばすのではなく、シューマンラヴェルも、設計図は極めて理知的であったように思われます。非凡な人ですね。なおラヴェルの途中で地震あり。家鳴りもしたため、客席はざわめきましたが、ムトゥツキンは意に介さず演奏を続行。肝も据わってる。
 最後はルトスワフスキのデュオを、二人が全く違う音色で演奏して幕。これはこれで面白くて良かった。こう考えると、先月のアシュケナージ父子のデュオは、ピアノの音色にあんまり差がなかったですけれど、あっちの方が異常だったということになりそうです。
 なお第二部も19時59分に終了と、2時間以内に終わりました。毎回こうだったらいいんですけどねえ。