サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団来日公演(東京1日目)
19時〜 サントリーホール
- ロッシーニ:歌劇《セヴィリアの理髪師》序曲
- メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調op.64
- (アンコール)J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調BWV1004よりサラバンド
- ストラヴィンスキー:バレエ音楽《春の祭典》
- (アンコール)エルガー:エニグマ変奏曲op.36より《ニムロッド》
- 庄司沙矢香(ヴァイオリン)
- サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)
- ユーリ・テミルカーノフ(指揮)
極めてノーブルかつヒューマンな演奏で感心。ロッシーニとメンデルスゾーンで、オケはとてもお洒落に鳴ってました。こういう響きは、このコンビでないと出せないかも知れません。庄司沙矢香のヴァイオリンは、極めて真っ直ぐにしかし情熱を込めて、メンデルスゾーンの手垢に塗れた名曲を鋭敏な曲に仕立て上げてました。しかし今夜の演奏のハイライトは明らかに後半の《春の祭典》。この曲は、大オーケストラの機能美を追求したモダンな演奏や、曲のバーバリズムを追求して故意に荒々しくした演奏が主流であり、特別な曲としての性格がまだまだ強い思うのですが、テミルカーノフは、懐深く曲想を受け止めて、より自然で滑らかで瞑想的、そして敬虔な感情を掘り起こしていく。しかもそれがばっちり決まっているんですよね。《春の祭典》が宗教祭礼を描いていることを痛感させられました。そしてお得意のアンコール曲目《ニムロッド》ではオケをたっぷり鳴らして聴衆の胸をいっぱいにしてくれる。良い演奏だった。
テミルカーノフの指揮姿で印象的だったのは、《春の祭典》。この人は暗譜で振らないし、譜面も基本的にずっと見ているんですが、《春の祭典》ではこれが極点に達し、左手は譜面をずっと押さえているし視線も落としっぱなし。しかし右手から出される指示が適切極まりない。オケの方をほとんど見ないのに、腕一本で完璧にドライブしていました。あれは凄かった。