読響フェスタ
19時〜 東京オペラシティコンサートホール
下野竜也の自虐ネタ満載のトークが楽しかった。自分は読響では現在の指揮者陣では一番若いし、マニアックな曲目を担当してオケも客も引き気味、CDはあんまり売れず景品に回され、コンサートのチケットもたくさん余っている*2などなど色々喋っておられまして、人当たりの良い面白い1969年生まれのオタクだなあと思った次第であります。ただし、個人的には読響の楽団員との絡みがもうちょっと欲しかったかな。チューバ奏者の次田心平氏(むろん《運命》の演奏に参加することはない)に無茶振りで《運命》振らせた時ぐらいなんだよなあ。オーケストラのメンバーも愉しそうに聞いておられたので、オケとの関係は良好のようでした。善哉善哉。
というわけでトークはなかなか面白かった。演奏は最後に回すとして、その他のイベントでは、まず伴奏当てクイズ。ドヴォ4なんて出されても誰もわかんねえよ(笑)。しかし他のは超有名曲で、聴いているだけで何となくわかるんですが、個人的には「わかる! わかるぞ!」という喜びよりも、主旋律取り払ったらこう聞こえるのかという新鮮な驚きが先に立ちました。伴奏が必須要素でないと物足りないのは確か*3ですが、それでもやっぱり人間は主旋律で曲を覚えている。しかしオケの中の人々は、サビを弾く時間よりもこういう伴奏を担当している時間の方が遥かに長いわけで、色々と頭が下がるなあと思った次第であります。というかあの人数で伴奏をやるなんて、オーケストラぐらいなんじゃないかな。
客にも読響を指揮してもらおうという企画は、個人的には正直申し上げてどうでも良かったんですが、当たった2名のお客さんが拍子取ってなかったのは色々と興味深かった。あと、2名とも中年男性だったんですが、舞台上から振る人を当てる立場だった下野さんには、もうちょっとバリエーション付けていただきたかったかなと。1名は女性にするとか若者にするとかお年寄りするとか、色々できたんじゃないかしら。
オークションでは、下野竜也ご愛用*4の「超御宅」と書かれたTシャツは33,000円、ベルリオーズの《ロミオとジュリエット》のヴォーカルスコア(指揮者とソリストのサイン付)は26,000円で落札されました。額は逆なんじゃないかと思わないでもなかったがまあいいか。なお落札額は全額、東日本大震災の義援金として寄付されるそうです。
プレゼントは、事務局の人が持って来た箱から客席番号が入った紙を箱から楽団員と指揮者が取り出し、舞台上で抽選する形式。オケをバックにプロによる記念撮影とか、練習場見学とか、ジャイアンツのチケット(読売日本交響楽団らしい景品)、下野氏のCD、美術展チケットが計11名の方に贈られました。
さて演奏。ベルリオーズは正直パッとしなかったと思います。フォルムは綺麗でしたが、もうちょっとリズムが弾んでたらねえ。続くビゼーは弦楽器の美麗なサウンドを堪能いたしました。こういう軽量級の作品でも読響はしっかり対応できるんだという当たり前のことを確認。後半のレスピーギは、下野の言う通り「ド迫力」の演奏で、耳をつんざく大音量の豪奢なサウンドが強い緊張感で響き渡っておりました。どのパートも本気モードでなかなか良かった。《五十年祭》が、その前の《チルチェンセス》の残酷にしておぞましい緊迫感を引きずったのか、かなりシリアスな雰囲気で奏でられていたのが印象的です。なお、どの曲目にも、フェスタにおいても手を抜かない真摯な下野竜也の音楽性が刻印されていたように思います。あ、そうそう、曲目は事前には公表されず、舞台上で下野さんが紹介するまでシークレットでした。ただ前半で「今日のテーマはローマです」と言ってたし、事前の宣伝でも「祭りに相応しいあの曲」とか言ってましたから、後半に何やるかはバレバレでしたけどね。アンコールは「いつもアンコールには登場しないグループによる演奏で」ということで、打楽器+バンダ+オルガンでの演奏となりました。オルガンが場違いなぐらい荘厳で笑えた。なお編曲は、読響の首席打楽器奏者の石内聡明さん。皆さん結構楽しそうに弾かれておられました。多分今日だけのための編曲なんだろうなあ……。
というわけで、大変楽しいファン感謝デーだったと思います。来年も行くかどうかは微妙。