不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

読売日本交響楽団第50回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

14時〜 横浜みなとみらいホール

  1. モーツァルト交響曲第40番ト短調K.550
  2. ベルリオーズ幻想交響曲op.14

 今月のカンブルラン指揮の演奏会はこれで最後。私が行く分だけにとどまらず、読売日本交響楽団としてもこれが今月最後の共演です。次は11月の予定。
 演奏はとても素晴らしいもの。前半のモーツァルトは、きりりとした造形、流れるようにスムーズな歩み(疾走)、そして洗練されたソフトなサウンドで貫徹。とくに最後に関しては、失礼ながら読響がこういう音を出すとは思っていなかっただけに、驚かされました。でも解釈は鬼面人を驚かせるようなものでは全くない正攻法で、完成された古典美が満喫できました。でも時々、「そうか実演だとここはこう響くのか」とハッとさせられる瞬間が訪れるのは、カンブルランの才能か、それともモーツァルトの天才ゆえか。多分どっちもなんでしょうけれど。
 後半は一転して、腹にズシリと響く重厚なサウンドをベースに、とにかく細かい所まで丹念かつ情熱的に仕上げた、楽譜にがっついた完全に肉食系の演奏。極端なデフォルメはないんですが、アクセントや特定パートをえげつないほど強調する場面も散見されて、全篇にわたってテンションもMAX。おかげで一瞬たりとも気の抜けない、強烈な演奏が現出してました。慣れだのマンネリだのとは程遠いところにある演奏で、良い意味でこの楽曲が「失恋して荒れ狂った若者が、薬物を呑んだ果てに見た幻想≒ほぼ悪夢」を描いていることを、聴き手の骨の髄まで叩き込まんとしているかのようでした。終始客席で圧倒されましたが、終わってみればスッキリ爽快、実に気持ち良く拍手できる。いやはや、読響は本当に良い指揮者を常任に迎えられたものです。当初契約では2013年3月末までが任期ですが、さて契約延長はあり得るのか? 今日の演奏は読響を能力の限界ギリギリまで追い詰めた演奏で、総奏時にリズムを強調すると微妙な乱れが出ていたたなど、若干の瑕が見受けられました。ここら辺をカンブルランがどう評価しているか……。