読売日本交響楽団第507回定期演奏会
19時〜 サントリーホール
- ベルリオーズ:劇的交響曲《ロミオとジュリエット》
- カタリーナ・カルネウス(Ms)
- ジャン=ポール・フシェクール(T)
- ローラン・ナウリ(Bs)
- 新国立劇場合唱団(合唱)
- 読売日本交響楽団(管弦楽)
- シルヴァン・カンブルラン(指揮)
サウンドをまぜず、各パートを分離させたままでザクザク進むカンブルランの音作りは、ベルリオーズには本当によく合っているわけですが、今日はそれだけでは説明できないほどの圧倒的説得力を有する、本当に目覚ましい演奏となりました。指揮者もオケもやる気が尋常ではなく、強い緊迫感を持つ、高い完成度の劇的かつダイナミックな演奏を披露。大編成のド迫力で押すのではなく、細かい部分からしっかりと組み立ててそれをカラリとした湿っぽくない情熱でまとめ上げており、どの一瞬を切り取っても音楽が本当に生きていたと思います。各所のニュアンス付けもほぼ完璧だったのではないでしょうか。特にヴィオラとチェロが絶好調、管楽器群も随所で耳をそばだたさせてくれました。RAからの無遠慮な咳(発声付き)でミソを付けられたとはいえ、第6部でのクラリネットの弱音が未だに耳に残っています。金管も要所を締めていて見事。
声楽は各独唱も合唱も素晴らしい仕上がりで、メロディラインや美声に耽溺するよりも、台詞の意味を十二分に吟味して、オーケストラと共にニュアンス豊かな世界を構築することに心を砕いていたと思います。結果、ロミオとジュリエットの悲恋と両家の和解が、実に感動的に描き尽くされておりました。でも終わってみればスッキリ爽快、という感じなのは、これぞまさにベルリオーズ、そしてカンブルラン独自の境地なのかもしれません。つーかこの曲、本当にここまで名曲でしたっけ? これほどまでにニュアンスが咲き誇る感動的で、加えて活きが良く劇的な楽曲だとは、正直全く思ってなかったのです。このレベルの演奏を実演で聴いてこそできる体験のように思われました。全演奏者に感謝を。
当初メゾソプラノにはベアトリス・ユリア=モンゾンが予定されていましたが、「健康上の理由」によりキャンセル。でも代役のカルネウスはカンブルラン推薦の歌手らしく、それも納得の素晴らしい歌を聴かせてくれました。これも幸運でした。