不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ダニール・トリフォノフ ピアノ・リサイタル

19時〜 紀尾井ホール

  1. ショパン舟歌へ長調op.60
  2. ショパンエチュードop.25
  3. シューベルト/リスト:春のおもい
  4. シューベルト/リスト:ます
  5. シューベルト/リスト:水の上で歌う
  6. シューベルト/リスト:魔王
  7. シューマン/リスト:献呈
  8. パガニーニ/リスト:ラ・カンパネッラ
  9. リスト:メフィスト・ワルツ第1番「村の居酒屋での踊り」
  10. (アンコール)チャイコフスキー:少しショパン風に
  11. (アンコール)ショパン:華麗なる大円舞曲op.18
  12. (アンコール)チャイコフスキー:田舎のエコー
  13. (アンコール)ショパンマズルカ第34番ハ長調op.56-2
  14. (アンコール)ショパン:タランテラ変イ長調op.43
  15. (アンコール)バッハ/ラフマニノフ:パルティータ第3番からガボット

 第14回チャイコフスキー国際コンクールのグランプリ受賞を記念した、ダニール・トリフォノフ(1981年生まれ)のリサイタルである。本プロが終わったのは20時35分頃とかなり短いリサイタルで下が、その後6曲もアンコールやったので終演は21時超え。ちなみにトリフォノフは拍手を受ける際「演奏終了しお辞儀→引っ込む→出て来てお辞儀→また引っ込む→出て来てお辞儀しアンコール開始」というよくある行程をショートカットし、「演奏終了しお辞儀→引っ込む→出て来てお辞儀しアンコール開始」という手順を踏んでました。これは本プロでも同じだったので、本日の演奏会は拍手時間が比較的短めだったと思われます。
 さて演奏。タッチのクリアネスは尋常ではないレベルに到達しており、どの曲も、最後の一音が絶対にかすれたりふらついたり濁ったりしなかった点に象徴されるように、どんな瞬間でも美しく輝かしい音を出している。そしてもちろん柔弱というわけではなく、力感にも溢れた素晴らしい演奏を披露。特に前半のショパンエチュードは完璧な仕上がりを見せていたと思います。op.10の方も今度ぜひ。後半のリストは、トリフォノフの僅かばかりの欠陥が出てしまい、前半ほどの感銘は受けませんでした。楽曲の「サウンド」に対する解釈は完璧なんですが、楽曲の「構成」に関してはもう一歩ってところがあり、これがあまり構成的ではない楽曲でグリップの弱さとして出てしまう面があるように思うのです。もっともこれは、前半がショパンだったからこそ比較してわかった*1に過ぎません。これはこれで十分以上に素晴らしい演奏であったように思います。テクニック的には本当に何の問題もないしね。アンコールも全て素晴らしい演奏でしたが、高速旋回するワルツが特に印象的だったかな。
 なお、プログラム上では演奏曲順が「ます→水の上で歌う」でしたが、実際には逆になっておりました(事前に会場掲示があったか否かは見逃しました)。楽器はファツィオリ。紀尾井ホールの音響特性もあって、よく鳴っておられた。

*1:もちろん、私がそう思いこんでいるだけ、という可能性も高いですが。