不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

モーツァルト・マチネーvol.6

11時〜 NEC玉川ルネッサンスシティホール

  1. モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調K218
  2. (アンコール)J.S.バッハ無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調BWV1004よりサラバンド
  3. モーツァルト交響曲第39番変ホ長調K543
  4. (アンコール)同上より第3楽章*1

 武蔵小杉にあるホールでおこなわれたが、このホール、場所が非常にわかりにくいと思われる。川崎ミューザが崩壊中の現在、今後も何度か演奏会に使われるだろうから、行く前には、ルートをよく調べるのが良いと思う。東京都心から行く場合は、東横線南武線ではなく、湘南新宿ライン横須賀線の各停が一番近いのでご注意を。
 ホールは本来講演会場と思われ、響きはデッドだが、本日は小編成かつリズムが弾むスダーンのモーツァルトということで、全く気にならない。舞台の奥行きが狭いので、オーケストラの特に管は窮屈そうに座っていたが、演奏内容は普通に素晴らしかった。
 まず協奏曲では、ウィーン・フィルコンサートマスターにして川崎市の音楽大使*2のキュッヒルが、見事なソロを聴かせた。むろん、メカニカルの面で彼以上のヴァイオリニストはいくらもいるだろうが、きりきりハキハキとしたテンポとリズム、そして味わい深い音色は、他ではなかなか得がたいものである。また、楽想の随所にバネを仕込むスダーンのモーツァルトとは意外と相性が良い。協奏曲の伴奏では、オーケストラもソロに配慮してかビブラートをかけており、それを排した(=いつものスダーンに戻った)後半とは芸風がまるで異なるが、前半と後半では趣向は違えど印象はそれほど変らなかったのはなかなか面白かった。それにしても、本家本元ウィーンの伝統的モーツァルトが、これほどまでに集中力に富むものであったとは。これなら「モーツァルトだから眠い」という言い訳は絶対にできない。ソロ・アンコールのバッハも、集中度の高い厳粛な演奏に感銘を受ける。
 後半の交響曲は、スダーンが本領を発揮。楽想が弾む弾む。フィナーレは元々が非常にリズミカルかつ小回りの利く曲であるため、他の演奏と比較してのインパクトは弱まったが、他の楽章はとにかく圧倒されっぱなし。これほどまでに活発なモーツァルトはなかなか聴けない。面白かったのは、第三楽章。トリオの終わりでかなり長いパウゼを入れていた。この楽章は管もGJ。素晴らしい演奏となった。
 休日の午前中からこのような演奏が聴けて、私は大いに満足です。聴衆の集中力も高く、マナーも上々。次回以降も、彼らのような人と共にスダーンと東響の作るモーツァルトに接したいと願います。

*1:ただしトリオで終わり。会場は笑いに包まれてました。

*2:奥様が川崎市出身とのこと。