不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

モーツァルト・マチネ 第5回

11時〜 洗足学園前田ホール

  1. モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626

 ミューザ川崎は天井仕上材が大崩落していて当面使用不可(というか、修理可能なのかあれ)なので、会場を同じ川崎市内のホールに変更し、ついでに席も自由席となって開催されたコンサートである。
 東日本大震災の犠牲者に捧げる――なんて特別なコメントも何もなく、一つの演奏会という趣で粛々と開始された。演奏もスダーンお得意のピリオド・スタイルで、粘りの強い表現を採らずに、速めのテンポできびきび進む。東響コーラスは最初から十分な仕上がりを見せており、しかも次第に熱が入って行く。メンバーがどれぐらい重複しているかはわかりませんが、これには3月末の定期公演で小林研一郎指揮のもと、同じ曲をラクリモーサまで歌った経緯もプラスに働いたのではないでしょうか。ソリストは全員特段の弱点がなく、この名曲をしっかり立ち上げてくれた。オーケストラも安定していたと思います。総じて好演であったと言えましょう。ただし、スダーンの音楽作りは、レクイエムのような「最も暗いモーツァルト」よりも、長調作品で活かされるような気もします。モーツァルト・マチネーに行ったのは今回が初めてでしたが、より華やかな曲目が組まれる次回以降にも期待します。
 なお終結では、しばらく静寂が保たれたとはいえ、まだスダーンが腕を下ろしていないのにバチバチ拍手が始まってしまったのは残念でした。