不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団来日公演(2日目)

サントリーホール 15時〜

  1. ドヴォルザーク:序曲『謝肉祭』op.92
  2. ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲イ短調op.53
  3. (アンコール)イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番 ホ短調op.27-4 から「アルマンド
  4. ドヴォルザーク交響曲第7番ニ短調op.70
  5. (アンコール)ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 ホ短調 op.72-2
  6. (アンコール)ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 ハ長調 op.72-7

 ゲヴァントハウスの来日公演2日目にも行って来た。昨日はブル8一曲という大変潔いプログラムでしたが、本日は同一作曲家で序曲→協奏曲→交響曲というもの。ただしドヴォルザークなのにチェロ協奏曲ではなくヴァイオリン協奏曲、交響曲も8番や9番ではなく7番ということで、マイナーと言うほどではないが、どメジャー路線を避けたとは言えるわけです。
 この手のオーソドックスなプログラムは、演奏によって雰囲気が禁欲・華麗どちらにも転び得る。個人的には、序曲と交響曲は派手さも十二分に備えた純音楽的解釈で貫徹されたが、協奏曲およびソロ・アンコールは、カヴァコスのストイックな要素が前面に出たためかなり真面目な奏楽という印象を受けた。バックのオーケストラの鳴り方は序曲や交響曲と差がないんだけれど、やっぱり協奏曲はソリストに場が支配されるんだなあと実感いたしました。カヴァコスは無精ヒゲ&黒シャツという格好で出て来て、メガネかけていることもあり、「秋葉原にいてもまるで違和感がない」あんちゃんでしたが、その演奏も容姿に合ったものであったように思います。非常に地味でシャイ、しかし心が籠もっているタイプの物。テクニックでバリバリ弾きこなすことはあえてせず、ひたすら真面目にシリアスにストイックに曲の中身に迫ることを優先する。アンコールの戦曲にもそれは表れていて、華麗なテクニックあるいは美しい音色を聴かせようというものではなく、楽曲そのものを重視しているタイプの演奏。テクニックがないとか音が汚かったわけでは全くないので、そこんところ注意な。これは良いヴァイオリニストです。
 オーケストラの鳴りはブルックナーの際とほぼ同じ。つまり非常に素晴らしい音色が聴けたわけですが、昨日に加えて威勢の良さもかなり加味されており、ハーモニーの一体感も今日の方が上だったように思われる。木管の表情付けも濃厚であった。曲によるところも大きいんでしょう。今回の発見は、ドヴォルザーク交響曲第7番が、第一楽章と第二楽章はそうでもないけれど、第三楽章とフィナーレは民族性が非常に強いということ。シャイーの解釈はフレージングとリズム感を重視するもので、要はオーケストラ全体が曲調に合せて「揺れる」んですが、この揺れ、第一楽章と第二楽章は通常の交響曲絶対音楽)として違和感のない範囲に収まっており、独墺系の作曲家が書いたと言われても納得しそうな一方、第三楽章と第四楽章はいかにもスラヴ、それも確かにチェコだという感じなんである。これは面白かったな。シャイーもドヴォルザークの方が情熱を爆発させやすいのか、序曲の段階から割と全開。フィナーレにおけるリズムの踏みしめも大変に素晴らしかったと思います。ただ勢いが非常に強くテンポも速めだったので、これを「乱暴」と感じてしまう聴き手もいたことでしょう。個人的にはそのような感じは全く受けなかったけれどな。
 客も休日マチネー&花粉症シーズンにしては、行儀が良かった。交響曲フィナーレがあれだけ煽った演奏だったのに、フラブラもなし。毎回こうだったらいいんだけどな。
 それにしてもライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団は素晴らしい。次の来日は2014年となるそうだが、スケジュールが許せばその際も聴いてみたいと思います。