不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

NHK交響楽団第1695回定期公演

15時〜 NHKホール

  1. マーラー交響曲第3番

 チョン・ミョンフンのマラ3を聴くのはこれで2回目だが、基本的な印象は変わらない。すなわち変なことはせず、極めてオーソドックスなテンポと音響バランスでしっかり聴かせる。マーラー交響曲は、第1番を除くと細部の凸凹が非常にきつく付けられているのだが、チョン・ミョンフンはこれを均す方向の音楽作りをしている。これ、マラ5ではあまり感心しなかったが、マラ3では成功。凸凹が必ずしも躁鬱や陰陽など「気分の緩急」に直結していない曲だからだろう。管中心にポカがあったが、音楽の流れを阻害するほどのこともなく、滔々と流れる大河のような演奏が繰り広げられ、マーラーの曲想をじっくり味わえた。大編成の弦を、音量を追求するのではなく、まろやかな響きを出すために駆使していたのが印象的である。改めて、この曲って誰がどうやってもフィナーレでうっとり出来るようになっているなあと痛感。とはいえフィナーレだけで帳尻を合わせるような手抜き仕事ではなく、フレージングやリズムは第一楽章からノリノリだったのは、当日の演奏が凡庸なものでなかったことの証である。この点では、コンセルトヘボウ以上であったと思う。なお改めて言うまでもなかろうが、アルト独唱は神であった。
 最後の最後は、指揮者がまだ腕を下ろしていないのにブラボーと拍手の嵐。まあいいんですけどねもう諦めているから。後ろの席の三十代男は盛んに拍手しながら「ブボー」(ブにアクセント)と叫んでいて、節子それブラボーちゃうブーイングや、などと思っておりました。見てくれ的には完全に普通の人で、同年輩の女性が連れ立っていることから中身もまともな人であるように思われます。なのに何故。