不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ダン・タイ・ソン ピアノ・リサイタル

14時〜 紀尾井ホール

  1. ショパン舟歌Op.60
  2. ショパン:ピアノ・ソナタ第3番ロ短調Op.58
  3. ショパン24の前奏曲Op.28
  4. (アンコール)ショパンマズルカ第13番イ短調Op.17-4
  5. (アンコール)ドビュッシー:《子供の領分》より《グレゴリーのケークウォーク》
  6. (アンコール)ショパンポロネーズ第6番変イ長調Op.53《英雄》

 ダン・タイ・ソンベトナム生まれのピアニストで、ショパン国際コンクール入賞経験を持つ。ただしイケメンではなく、アイドル路線に行った経験は(多分だが)ないだろう。紀尾井ホールで9,000円という、高いことは高いけれどサントリーホールで1万円超えするイケメンのショパコン優勝者陣に比べると抑え目の価格設定も、これによるものなのだろう。
 演奏は大変見事なものであった。妙なルバートなどもなく、細かい箇所に拘泥し過ぎることもなく、どっしり構えて右顧左眄せず、スケール豊かに仕上げていた。解釈そのものは若干大雑把か、と思われる箇所が現れたが、タッチと呼吸が深く音自体は非常に綺麗であったので、ニュアンスは必要十分に付与されていて不満という程のことはない。ただしアンコールのドビュッシーは、曲が曲だけに小回りがきいていない印象を受けた。あと、やはり私は《英雄》ポロネーズが好きではないことを確認。こういう派手で賑々しい音楽は、真面目なプログラムの後に聴きたくはない。いやまあ弾いてくださるなら聴くんですけれど。
 ダン・タイ・ソン、良いピアニストでした。変なことしないので安心して聴けるのが嬉しい。反面ややもすると若干退屈になりますが、まあそこはそれ。ショパン以外も聴いてみたいです。
 ところで今日は、24の前奏曲の最後の最後で、まだピアニストが鍵盤を押し続けている(つまりまだ音はピアノから発している)のに、1階右翼で「大変ね」などとボソボソ喋っていた女性がいた。中高齢以上の2人組かな。感心しての喋りなんだろうが、これは明らかにアウト。新日鐵さんの高炉に還元剤として使ってもらうべき。