ラファウ・ブレハッチ ピアノリサイタル
15時〜 フィリアホール
- ショパン:バラード第1番ト短調Op.23
- ショパン:3つのワルツOp.34
- ショパン:スケルツォ第1番ロ短調Op.20
- ショパン:2つのポロネーズOp.26
- ショパン:4つのマズルカOp.41
- ショパン:バラード第2番へ長調Op.38
- (アンコール)ショパン:ノクターン第20番(遺作)
- (アンコール)ショパン:ポロネーズ第6番「英雄」
- (アンコール)ショパン:マズルカOp.50-2
- ラファウ・ブレハッチ(ピアノ)
楽譜に記された音響構造ではなく、楽曲に籠められたエモーションを重視した演奏であった。エッジの立ったテクニックでショパンを弾いた場合、それはそれで見事なんだけれども、普通の聴き手がショパンに抱くイメージからはややずれる傾向がある。この点、ブレハッチは柔らく温かい音色を主体としており、メカニカルな切れ味を多少犠牲にして、楽曲からロマンティックな感興を引き出していた。面白いのは、これが真面目で真摯に達成されていた点である。雰囲気を重視する演奏は、通常、私のような嫌味な聴衆には「これ見よがし」あるいは「悪い意味で常套的」にしか映らないものだが、ブレハッチから受ける印象は全く逆で、真摯なものである。また全曲にわたって表現意欲が漲っており、ショパンという作曲家の感傷的な側面に真正面から果敢に攻め込んだという印象。
ただし、全ての曲目についてこれが「的確に」実行されていたかどうかは議論が分かれるだろう。バラードやポロネーズでは、悪い意味で情緒に流されていたように思う。もっと力強く、かつ鋭角的でいいんじゃないかな。一方バラード、ワルツ、マズルカは特に文句ありませんが、ないものねだりをすると、ツィメルマンの高みにはまるで届いていない。無論まだ25歳と若い演奏者なので、今後の伸びに期待しますし、できる人材だと思います。
なお個人的に面白かったのは、このプログラミングでは、英雄ポロネーズが異色な曲に聴こえたことである。他の曲は憂いに満ちているのに、これだけは元気溌剌一辺倒。アンコールだったことを考慮しても、方向性が全く違うことは明らかだった。ここまでハッキリ悟らされたのは初めてだな。