清水和音 ピアノ・リサイタル
フィリアホール 15時〜
- ショパン:ポロネーズ第7番変イ長調Op.61「幻想」
- ショパン:バラード第4番ヘ短調Op.52
- ショパン:2つの夜想曲Op.55
- ショパン:スケルツォ第4番ホ長調Op.54
- ラフマニノフ:楽興の時Op.16
- (アンコール)ラフマニノフ(R.ワイルド編):12のロマンスOp.21より《何という美しい所でしょう》
- (アンコール)プロコフィエフ:《3つのオレンジの恋》より行進曲
- 清水和音(ピアノ)
今年で50歳のベテランのリサイタルを聴きに行く。このピアニストは名のみ昔から(それも、「趣味」を持ち始めたかなり初期の頃から)知っていた。というのも『三毛猫ホームズの音楽ノート』で赤川次郎と対談していたからである。マーラーとブルックナーはオーディオ方面から人気が出たに過ぎない等、ズバズバ物を言う面白い人だなと思った記憶がある。しかしその後も、彼の実演に接しなかったし、録音を買い求めもしなかったので、マトモに聴くのは今回が初めてとなる。
正直に書こう。ずっと一本調子で退屈な演奏だった。確かにピアノはうまい。ミスタッチはあったが、「うまい」という印象を覆すほどではなく、特に鋭くはないんだが、ピアノの音は綺麗かつ大きくて重いものであったように思う。しかし曲の弾き分けに興味がないようで、曲想にかかわらず、とにかくおもむろに音楽を進めて行く。どの部分でもニュアンスが全く感じられず、最初から最後まで潤いに欠けていた。一言で言って、鈍重。あるいは、味気ない。クライマックスにおいて鳴り響く轟音が、ひたすら虚しかった。
なお、当日の中で相対的に良かったのはラフマニノフ。何故かはよくわからない。実はショパン嫌い、というわけでもなさそうなので、単純に芸風との相性の問題なのか。ショパンという作曲家、かなりかっちり曲を作っているようで、意外と演奏者にゆだねた部分も大きいってことなんでしょうかね。俺が常々馬鹿にしてやまない「ろまんてぃっくなしょぱん」像も、ある程度は演奏に代入せねばならんということなのか。エモーションが抜き去られたショパンは、本当にパサパサで、なんか色々と哀しかった。一方、ラフマニノフは(ショパンと比べると)弾いてるだけである程度エモーションが出るような曲になってるってことなのでしょうか。