不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

音楽堂バロック・オペラ《アーサー王》

神奈川県立音楽堂:15時〜

  1. パーセル:歌劇《アーサー王

 実質的には演奏会形式上演+α程度だったので、タグは「演奏会」にしときました。
 作品が作品なので、ストーリーラインを追うよりも、音楽そのものと、場面ならびに台詞から舞台を作って行く感じ。しかし、ダンサーをも複数用いた演出が成功していたとは言い難く、イギリス賛美場面で日本の現状を憂う字幕を舞台中央上部の匡体に映写していたのは難しく感じた。特に顔文字とかはマジで不要だったんじゃないか。シェイクスピアからとった台詞ですよねこれ、と誇らしげに言ってしまうのもいかがなものかと思う。性を時折前面に押し出す――というよりも、ちょっとだけ若者文化かじったおっさんがゲヘゲ言っているかのような下ネタに付き合わされているようで、不快感だけが募った。アイデア倒れというか、プレトークで伊藤自身が「音楽の邪魔にならない演出をしたい」と言っていたにもかかわらず、邪魔しまくりである。文字を映写しないと何もできない辺り、この人は演出家としては真剣に頭が悪いのではないか。猛省を促したいし、反省しないのであれば消えていただくのみである。音楽堂バロック・オペラ・シリーズは、次回以降は演出は不要。財政が厳しい折、真っ先に切るべきは彼のような凡愚に渡す金だ。
 しかし、音楽は本当に素晴らしかった。外国人が大半を占め*1日本語による演出意図がよくわからないことも功を奏したのか、実に快活な音楽が80分余続いた。パーセルというのはどうにも地味なイメージがあったのだけれど、あっけらかんと、すっきりさっぱりハキハキと演奏されると、活力に満ちた新鮮な音楽に聞こえて来て、蒙を啓かれる思いであった。若干技術的な粗はありましたが、それもまあ味の範囲内。合唱もオペラティックな猥雑感が出ていて良かったし、ソリストもまずはしっかり歌っていて好感を持った。次はぜひ伊藤隆浩抜きでやっていただきたい。シャルパンティエの《メデ》とかいかがですか?

*1:日本人は、オーケストラのヴィオラ・ダ・ガンバ奏者1人だけ?