不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

NHK交響楽団第1640回定期公演(2日目)

NHKホール:15時〜

  1. スメタナ:連作交響詩《わが祖国》

 チェコの「隠れた名匠」エリシュカを聴くため、貧民席に紛れ込んできた。1931年生まれだからもう70代後半ですが、身のこなしは比較的スムーズでした。
 最初の《高い城》から、綺麗に音像と「音楽が描写しようとしている情景」が立ち上がるようで、はっとさせられました。特殊なことは何もしてないんですけど、音楽の呼吸が深くて、落ち着いた風情を醸し出していたのが素晴らしかったです。何と素朴な、でも素晴らしい味わい。ただし、ハイティンクを聴いていくらも経っていないので、「深い呼吸」「落ち着いた風情」「素朴」もまた創意工夫に過ぎないとの思念に囚われてどうもいけませんな。いや、エリシュカの方が間違いなく普通の音楽なんでしょうけど。NHKホールで鳴っていた音楽がマトモ極まりなかったことは保証してもいいです。
 続く《モルダウ》《シャルカ》《ボヘミアの牧場と森から》でも素晴らしい演奏が展開されていました。《モルダウ》は標準からすると僅かにテンポが速めだったと思いましたが、その他はやや遅め。ここら辺のテンポ設定も絶妙でした。だがしかし、そんな好演をもってしても俺には《ターボル》と《ブラニーク》がとんと理解できない。チェコ民謡知っていたらまた感想も違うのかなあ。
 NHK交響楽団は各パート真面目に弾いていました。ホルンを含めた金管がちゃんと鳴っていたので安心して聴けたように思います。ただしどうにもこうにも腰が重く、音楽のギアチェンジに鋭敏に反応できていなかったような……。《シャルカ》の最後とか、《ターボル》《ブラニーク》辺りにそれは顕著だったように思います。オケのせいかホールのせいか、それともこんな世紀の糞ホールだからこんなオケに育ってしまったのか。エリシュカの次回東京登場は、是非とも他のオーケストラを振っていただきたい。