ジョニー・ザ・ラビット/東山彰良
- 作者: 東山彰良
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2008/12/10
- メディア: 単行本
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非常に不思議な読み口の物語である。後半ではかなり迫真性のある筆致で人間のマフィア抗争や発電所に関する汚職を描いている(そしてもちろん、ウサギは単なるペットでしかない。人間との意思疎通もできない)のに、前半では、ウサギやドブネズミが友情で結ばれたり、粗筋にもあるようにウサギが知り合いのウサギの捜索依頼をウサギに出したり、野原(?)にはウサギのマスターが経営するバーがあったり、ウサギが進化の階梯を登ろうと「死」のことを考えたりして変な宗教集団を形成したりする。擬人化の度合いが前半と後半ではっきり別れているのだ。しかし、主人公ジョニー・ラビットはシニカルなものの見方をするウサギの私立探偵として一貫し、ノワール寄りのハードボイルドという作品の特徴を明らかにしている。初見の雌ウサギ(しかも依頼者!)に何はともあれのしかかって交尾したり、草を食べてトンでいる一団がいたり、仇のボビーの膝の上で撫でられてジョニーが気持ち良くなってしまうなど、ウサギならではの習性が笑いを呼ぶ。しかし肝心な場面ではことごとく、暗さや深刻さが強調されるのである。特に、重要なテーマである「死」が醸し出す寂寥感や儚さは、天下一品である。
本書最大の特徴は、これらをやるのがウサギであるということだ。いい意味で実にミスマッチであり、批判を恐れずにバカミスと主張しておきたい。