第三帝国の興亡4/ウィリアム・L・シャイラー
- 作者: ウィリアム・L.シャイラー
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2008/10/31
- メディア: 単行本
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日本人として興味深かったのは、日頃アホだ馬鹿だ近視眼的だ児戯に等しいぞこの野郎などとボロクソに言われることが多い日本外交が、珍しく狡猾に描かれていることである。日本はドイツが敵対するソ連に対する宣戦せず、逆にドイツは、日本が敵対するアメリカに対し宣戦するのだ。そして史実でも実際こうなったのである。日ソ不可侵条約がありアメリカを当面の敵とした日本にとって、事態は都合良く運んだわけである。……もっとも、この後日独伊は連合国にフルボッコされ、この時点での都合の良し悪しは意味をなくしてしまう。虚しい外交勝利であったといえよう。なお見方を変えれば、日本は調子の良いことばかり言うナチスに騙されたとも言えるわけで、本書がナチスを俯瞰する作品だからナチス側にとっての都合の悪い状況に触れたに過ぎず、日本から見た場合それはそれで色々と不都合が当時からあったのではないかと思われる。人間同士、国家同士の取り決めにはよくあることとはいえ、win-winの関係は難しいですな。
いずれにせよ、運命の歯車は、枢軸側に不利な方向に回り始めた。次巻ではヒトラーの死と第三帝国の崩壊が描かれる模様だが、その前に、遂にホロコーストに触れられるらしい。次が出るのは2009年2月の予定。楽しみにしています。