造花の蜜/連城三紀彦
- 作者: 連城三紀彦
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2008/11
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 28回
- この商品を含むブログ (75件) を見る
10月末というミステリ年度的にはドン詰まりの時期に登場した、連城三紀彦の新作長編である。この作家の長編としてはかなり長い方だが、その分作中のイベントは盛り沢山である。おまけに物語は怪しい登場人物でいっぱいだ。彼らの人間関系が錯綜し、事件の真相を見抜くことは恐らく不可能に近かろう。本格ミステリとしては若干アンフェアというか、やや後出し気味の部分もあるが、騙しと真相隠蔽のテクニックそのものは冴え渡っている。誘拐ものとして新機軸を打ち出しマニアも十分満足させつつ、どの部分にもサスペンスを通わせているため、ただ読むだけでも非常に面白い。素晴らしい。
唯一問題があるとすれば、『造花の蜜』は過積載だということになろう。最終章は完全にボーナス・トラックだし、そこに至るまでも、ちょっと色々起き過ぎており、物語の焦点がぶれている印象がある。個人的には若干消化不良を起こしてしまった。贅沢な悩みではあるのだが。
いずれにせよ、本書は傑作ミステリである。一読をおすすめしたい。……ところでこの装丁、文春の《本格ミステリ・マスターズ》と似ていますな。