不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

児玉桃メシアン・プロジェクト2008 ピアノ・リサイタルⅡ

フィリアホール:14時〜

  1. メシアン:鳥のカタログ(全曲)
  • 児玉桃(ピアノ)

 《鳥のカタログ》は、フランス全土で数百種類ともいわれる鳥の囀りを記譜し、生息環境と込みで音化した曲集です。本日はその全13曲を一気に演奏する会でした。途中15分の休憩を2回挟み、終わったのは17時半。正味演奏時間は2時間50分強といったところでしょう。舞台の奥に布を垂らし、楽曲ごとに、メシアンのコメントと鳥の絵を映写し、雰囲気を盛り上げていました。
 非常に長いコンサートになったわけですが、児玉桃は一貫して集中度と精度の高い見事な演奏を繰り広げていました。一般的にイメージされるところの「メロディー」はない音楽なんですが、確かに曲ごとに違う場所を描いているような感じを受けて、メシアンの抽斗の多さには驚嘆するばかりです。鳥の囀りっぽいフレーズが四六時中出て来るのも面白い。なお先月聴いた《幼子イエスに注ぐ20のまなざし》に比べると、《鳥のカタログ》は焦点が絞られていない印象を受けました。でもこれは当たり前で、《幼子イエス》は全曲通したテーマは内面的なものを含めて明確ですが、《鳥のカタログ》の場合、鳥とその生息環境という外面上のテーマは明らかなものの、それは「自然」という茫洋としたものを描こうという意図に支配されているわけで、内面などといった人為的な焦点はそもそも持っていないわけです。これは良し悪しの問題ではなく、最初から予定された性質の違いと言うべきでしょうね。
 いずれにせよ、メシアンは凄い作曲家だったし、児玉桃もグッジョブ! 今後近現代もので児玉桃がリサイタル開くのであれば、馳せ参じたいと思います。コストパフォーマンスも糞高いからなあ(何せ《鳥のカタログ》全曲の名演を小ぶりなホールで聴けて4,000円ですよ! 青葉台は若干遠いけど)。