東京交響楽団第560回定期演奏会
サントリーホール:19時〜
うおおおお! キタエンコすげえええ! という感じの演奏会でした。雄渾、という表現がぴったり。何も足さない、何も引かない。ただただカロリー満点のスケール豊かなオーケストラ奏楽がそこにある。コシが強くてリズムも重いんですが、何だろうあの精気は。ニュアンスを微細に付ける演奏もマイクに入りにくいですが、あそこまで覇気に満ちた演奏もまた、なかなかマイクには入らないんですよね。これぞ生の醍醐味です。チャイ5を心行くまで堪能しました。正直、ムーティ指揮ウィーン・フィルで聴いた時よりも遥かに満腹度が高い。オーケストラも、一部技術的綻びが見られたものの、全員で棒に食らい付いていて素晴らしかった。
モーザーのチェロも面白かったです。変な音を出す瞬間もなくはなかったですが、やる気満々に弾いていました。鋭い音色で楽曲に切り込むタイプの奏者で、テンションも非常に高く、チェロに大らかなイメージを抱いていた人はぶっ飛んだことでしょう。アンコールのバッハも同様の演奏で、聴き手に集中を迫っていました。普通はもっと柔らかく弾くんでしょうが、これはこれでもちろん素晴らしい。
シューベルトの序曲は初めて聴く曲でしたが、ところどころ《ロザムンデ》or《魔法の竪琴》っぽくなって面白かったです。ただし、今の俺はシューベルトで東響なら、スダーンの指揮で聴きたかったかな。キタエンコはグランド・マナーに終始しました。これはこれでいいんですけど、音が弾んでいないのは不満。まあ単なる好みの問題ですけど。