紙の碑に泪を/倉阪鬼一郎
- 作者: 倉阪鬼一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/09/05
- メディア: 新書
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作中作『紙の碑に泪を』の内容があまりにもバカバカしい(ジム・トンプソンを模倣*2)ので、これに仕掛けがあることはすぐわかる。しかしだからと言って実際に何がおこなわれているかを見破ることは難しい。作中の現実におけるアリバイ・トリックがなかなかうまかったこともあり、楽しませてもらった。しかし多少気になるのは、倉阪によるこの手の作品の「書き手側の難易度」が次第に下がって来たように思われることだ。いつも『呪文字』や『しあわせの書』『生者と死者』並にすべきとは思わないが、文章を書くこと自体に難渋するような強い制約がかかっていないと心底感心するのは難しい。
また、読んでいて面白かったのは、複数のブログ描写が真に迫っていたことだ。いずれのパターンも「こういう人、いますよね」という感じである。多少揶揄交じりかも知れないが、コンサートには様々な客層が来るということがよくわかるのである。