不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

日本フィルハーモニー交響楽団第603回定期演奏会

サントリーホール:14時〜

  1. シューベルト交響曲第7番ロ短調D.759《未完成》
  2. ブルックナー交響曲第9番ニ短調

 以前、紀尾井シンフォニエッタを指揮して構造的だが音色の濁った《ハフナー》を聴かせたヘンヒェンが、日本フィルに客演して未完成交響楽2題を振った。オーケストラにしっかりかっちり着実に弾かせる一方、音色には全然意を払わないスタイルで、楽想が変わろうが何がどうなろうが場の空気が全然変わらない。楽理的には正しいんだろうけど……という感じ。オーボエ・ソロをはじめ木管群も全然ニュアンスを付与してくれません。音量のレンジも狭くて、ピアノ以下がなかったような気がしないでもない。一本調子とはこの演奏のことを言うんじゃないでしょうか。堅牢な演奏ではありましたが、私はちょっと飽きました。申し訳ない。とはいえ、ヘンヒェンが指揮棒を使わず指揮をしていたブルックナーの第3楽章のラスト15分程度は、心なしか音が柔らなくなり、面目を施したかなあという印象です。前半も後半も、指揮者がまだ手を下ろしていないのに1階後方からバチバチ拍手がありました。他の客は余韻を楽しんでいるのではなく、終わったかどうかわからないに違いないと決め込んでいる模様ですが、その素晴らしい知能には驚き入るばかりです。
 1階前列両脇・LA・RAに恐らく同じ学校と思われる女子中学生(高校生かも……)が制服着用&教師同伴で大量出現。後半では、気持ち良いくらい皆さん爆睡してらっしゃいました。遠くから見ても数十人がまとめて沈没しているエリアが舞台両脇にできており、悪い意味でたいへんな壮観でした。課外授業なのか修学旅行なのかわかりませんが、生徒たちにはご愁傷様としか言いようがありません。晦渋で緩慢な曲*1が並んだ本日の演目からすると、こうなるのはほぼ見えていたわけで、連れて来ることを決定した大人は万死に値する。若い彼女たちに「クラシックって退屈」と確信されるのは損失に他ならないわけです。

*1:むろんいずれも素晴らしい傑作交響曲ではあるが、如何せん《慣れ》がある程度は必要な曲だと思う。