不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

スカラ・フィルハーモニー管弦楽団来日公演(東京2日目)

サントリーホール:19時〜

  1. ロッシーニ:歌劇《アルジェのイタリア女》序曲
  2. ロッシーニ:歌劇《ウィリアム・テル》序曲
  3. プッチーニ:歌劇《マノン・レスコー》間奏曲
  4. ヴェルディ:歌劇《運命の力》序曲
  5. チャイコフスキー交響曲第4番ヘ短調op.36
  6. (アンコール)ロッシーニ:歌劇《ウィリアム・テル》序曲より行進曲部分

 金曜日に兵庫公演をして再び東京にやって来たこのコンビ。木曜日の若干の不調を完全に跳ね飛ばし、本日の演奏はガチで素晴らしいものとなった。オケの鳴りが明らかに違う! 指揮者とオケの意思疎通のレベルも明らかに違う! チョン・ミョンフンが楽曲とオケを隅々までしっかり掌握しているのが手に取るように伝わってきました。大編成のオーケストラが一つの楽器のように伸びやかに歌う様は、まさにオーケストラを聴く醍醐味そのものです。おまけに前半の曲目はイタリア・オペラの名管弦楽曲が揃い(それをスカラ座のオケが弾くんだぜ! 《ウィリアム・テル》のあの有名な部分の弦の響きは本当に凄かった)、後半もメロディアスな作曲家チャイコフスキーの激しい曲。暗い部分の表現もバッチリで、迫力も満点、音楽の推進力が尋常ではない。でも節度をもったカンタービレが溢れているんですよねえ。我を忘れてずっと聞き惚れておりました。こういう演奏ばかりだったら、どんなにクラシックに偏見を持っている人もイチコロなんだろうなあ……。
 思ったんですが、クラシックって非常に派手派手しい芸術だと思います。2階席から舞台を見下ろしていたんですが、毎度のことながら、あれだけの人数のミュージシャンが統制された動きを見せるのはやはりそれだけでスペクタクルですよ。鳴っている音もカラフルですしね。
 演奏者サイドも大満足だったようで、1日目にはなかった、オケから指揮者への喝采がありました。チョンもこれに応えて、アンコール後のカーテンコールで舞台から客席に降りて、そこからオケに拍手を送っていました(さらに周りの客に「立って立って」とジェスチャーしていました。1階席の客はほぼ総立ちになったんじゃないかな)。木曜同様一般参賀もありましたが、今日の方はそれも当然の名演奏であったと思います。
 同じ演奏家で、日も2日しか開いていないのに、出来に歴然とした差が出るということを、今回もまた思い知りました。これだからコンサート行脚はやめられないのです。