不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ガーディアン/石持浅海

ガーディアン (カッパ・ノベルス)

ガーディアン (カッパ・ノベルス)

 勅使河原冴には亡父と思われる“ガーディアン”が憑いていた。それは冴に対する他社からの攻撃を防御する存在で、害意がない攻撃(事故含む)は単に跳ね返すだけだが、害意があればその強さに応じて、防御だけではなく相手に大ダメージを負わせるのである。たとえば、彼女にぶつかりそうになった自転車は見えない壁にぶつかって横転する(特に悪意のない運転者は怪我をしてしまうかも知れないが、これについて“ガーディアン”は一切顧慮しない)。一方、冴の尻をさわろうとした痴漢は手の指を全てへし折られるのである。ただし、“ガーディアン”は専ら自動的に機能するだけであり、宿主(?)たる冴自身にも一切コントロールできない……。
 二部構成の長編だが、事実上は“ガーディアン”に関する中編を2編収録しているに等しい。第一部は「なぜ“ガーディアン”は発動したのか?」という謎解き小説で、第二部は「どうやって“ガーディアン”を利用するか?」という小説になる。前作『耳をふさいで夜を走る』同様にミステリ要素の強度はいささか弱いが、登場人物がコンピューターか何かのように、理屈のみで全てを把握し納得していく気色悪さが、今回も遺憾なく発揮されている。ネタ自体は若干シンプルな作品だが、この石持浅海独特の持ち味は健在であり、オンリーワンっぷりが十分に味わえるのだ。ファンにはおすすめである。