最後のユニコーン/ピーター・S・ビーグル
- 作者: ピーター S.ビーグル,鏡明
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1979/10/15
- メディア: 文庫
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ファンタジーということで、実際に幻想的なシーンや設定が続出するのだが、本書は事実上の寓話といえよう。意味深でひょっとしてこれは警句なのか、という文章が地の文にも台詞にも頻出し、登場するキャラクターの心理は、かなり婉曲的にだが緻密かつ繊細に描かれる。リアリスティックな箇所はほとんど皆無で、物語の全てに神秘的な霧がかかっているような独特*1の読み口は、最初のうち戸惑うかも知れないが次第に癖になって来る。優しく温かいだけではなく、悲しくて冷たいこともよく起きて、物語の情感には隈取が付けられている。そしていつの間にか感動している自分がいたわけだが、そう思う人はどうも少なくないようであり、だからこそ復刊されたりもしたのだろう。
ストーリーラインだけに注目する読みは意味を為さないが、その点にも十分対応できる人には、強くおすすめしたい。もっとも、楽しみ方は一様ではなくなろう。それこそが素晴らしい寓話の特徴であるからだ。
*1:これを独特だと思うのは、単にミステリとSF以外を私が読み付けていないだけなのかも知れないが。