サイバーパンクの洗礼を受けた近未来SFを7編収録している。いずれも面白いし、
未来社会の様々なモチーフが乱舞する。はちゃめちゃな人生を送っている登場人物が多いのも特徴で、カオスにして活発な生き様の数々が魅力的である。テロリストの味わう世知辛い現実を描いた「小さな、小さなジャッカル」はSF色が薄いが、他の6編は何らかの空想科学が出来し、
スターリングのイマジネーションを見せ付ける。特に、砂漠にある謎の巨大施設に潜入する表題作「
タクラマカン」は、ネタ・テーマ性・
ドラマトゥルギーいずれの点からも素晴らしい。にしても凄い施設だなあ。忘れられている、という設定がまた何とも。あと、
ルーディ・ラッカーとの共作「クラゲが飛んだ日」は再読となったが、やはり他の作品とは味わいが異なる。マッド・サイエンティストがやり過ぎるという話で、ラッカーの作風に大いに引きずられているように思われた。
それ以外の4編は、SFネタよりも、登場人物の言動や思考回路の方が面白い。総合的には
スターリングがその実力を遺憾なく発揮した、魅力的な短編集といえるだろう。おすすめしておきたい。