占星師アフサンの遠見鏡/ロバート・J・ソウヤー
- 作者: ロバート・J.ソウヤー,Robert J. Sawyer,内田昌之
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1994/03/01
- メディア: 文庫
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ソウヤーの翻訳済み長編では、これだけを読み零していた。
恐竜たちの活き活きとした描写がまず興味をひく。爪と牙だけによる狩りが誉れとか、大陸は大河を進んでいるという宗教観とか、肉食獣の凶暴な本能をいかに抑制して文化的生活を送るかとか、なかなか面白い。こういった部分にもセンス・オブ・ワンダーが紛れもなく息づいている。そして本書は同時に、アフサンの成長譚でもある。通過儀礼や交尾など、成長に関するイベントも複数こなし、その科学的好奇心の強さもあって読者のシンパシーを着実に得ていくのだ。そして明らかにされる世界の真実! 中世ですなあ、と思っていた作品世界が急転直下、どこからどう見てもガチのSFになる瞬間は、やはりどうしようもなくエキサイトしてしまう。しかも世界がイメージしやすいのである。ラストが希望に満ちているのもいい。『占星師アフサンの遠見鏡』は、実にソウヤーらしい作品といえるだろう。
というわけで素晴らしい作品だと思うのだが、残念ながら同じ世界を舞台にした続編が未訳のまま残されている。キンタグリオたち、どうするんだよこの後!? 続編が出ないのは隔靴掻痒、実にストレスフルだ。糞つまんない《ネアンデルタール・パララックス》三部作を全部訳すくらいなら、このシリーズの続編が出されるべきであった。権利関係その他大人の事情があるのかも知れず*1、早川書房を非難しようとは思わないが、正直怒りのやり場がなくて困る。