不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ローズマリーの赤ちゃん/アイラ・レヴィン

 よく人が死ぬ曰く付きのアパートに引っ越してきた俳優ガイと新妻のローズマリー。彼らは、親切に過ぎるようにも思われる住民たちと交流を深めていたが、ある夜、体調を崩したローズマリーは悪夢を見る。そして彼女は妊娠した。ローズマリーは、しきりに腹部に走る激痛と、医師やアパート住民、そしてガイの不審な言動に、胸騒ぎを覚えて……。
 モダンホラーの名作として世評の高い作品である。ローズマリーの不安が正鵠を射ているのか、それとも単なる神経過敏なのかはっきりしないまま、サスペンスを次第に高めていく。妊娠の喜びと不安が交錯するのも、物語に強い緊張感と吸引力を与えている。ここら辺はアイラ・レヴィン、実にうまい。そして衝撃的なラストが訪れるのである。奇想天外な真相が表れる、などというオチではないが、人間心理を実にうまく突いていると共に、ローズマリーのキャラクターの周到ば描出の結晶である。全体的な完成度も高いので、是非一読をすすめたい。