地獄のハイウェイ/ロジャー・ゼラズニイ
- 作者: ロジャー・ゼラズニイ,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/07/15
- メディア: 文庫
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自虐的かつ露悪的な減らず口を叩くタナーは、正義のヒーローではない。それどころか素性はむしろ悪党である。この任務に就いたのも、自分が過去に犯した罪に関する司法取引の結果に過ぎないのだ。しかし請けた以上、彼はこの任務を最後まで果たそうとするのである。そこにはプライドがあるのだ。もっとも、内面描写は皆無なので、彼の本音の所在は読者には明示されない。ワルでニヒルな雰囲気を強く漂わせながらも、女子供には意外と優しいところを見せたり、悲惨な現実を垣間見たとき毒づいたりするシーンから、我々は彼の本性を読み取ることになる。もっともこれは特段難しいことではない。一言で言って、タナーは典型的名ダークヒーローなのである。そして終始それを貫き、善人の方向に変節することはない。このカッコ良さはある種の男のロマンであって、やはりちょっと痺れてしまうのである。特にラストなんか、とてもいいじゃないですか。
そんな彼を、簡潔な筆致が的確に描写する。本書は総合的にもなかなかカッコいい小説なのだ。さすがは『伝道の書に捧げる薔薇』の作者だ。SF史上に屹立する大傑作、というわけではないが、カッコいい小品が好きな人には強くオススメしたい。