不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

浮遊封館/門前典之

浮遊封館<ミステリー・リーグ>

浮遊封館<ミステリー・リーグ>

 ハイジャックされた旅客機。入ったはずの教徒が日を追うごとに半減していく宗教施設。消失する身元不明死体。手首と足首のない白骨死体。てんでバラバラに見えていた事件は、建築士であると共に探偵でもある蜘蛛手によって、次第に一つの像を結び始め……。
 《奇蹟の光》教団の不気味さを、特に雰囲気面でうまく引き出せていないのは残念だが、ネタ自体は面白い。トリックの新パターンを編み出したわけでもないし、その実現可能性も非常に低いため、整合性やリアリティを気にする人には向かない。しかし、叙述トリック以外の大袈裟な仕掛けがある本格ミステリを読みたい人にはおすすめしたい。一発勝負の感なきにしもあらずで、ロジックも弱いが、飄々とした語り口でいきなり大ネタをぶちかましてくる芸風、私は好きだなあ。