フリーランチの時代/小川一水
- 作者: 小川一水
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/07/01
- メディア: 文庫
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本書『フリーランチの時代』もまた、小川一水がその特徴を発揮した短編集である。奇妙な状況をそれなりにリアルに描きながらも、等身大の視点からの平明なパースペクティブを決して忘れない。「フリーランチの時代」における侵略行為(?)を受け容れる軽いノリ、「Live me Me」の肉体と意識の間で揺れ動く主人公の懊悩、「Showlife in Starship」におけるヒッキーの克己(メイドロボがいるのが笑えます)、「千歳の坂も」の長命時代における死の憧憬、「アルワラの潮の音」*1で示されるシビアな現実とビルトゥングス・ロマンの共存と対比。いずれも見事である。
『老ヴォールの惑星』に比べるとスケールや先鋭度は後退したが、その分普段着の小川一水に近付ける好短編集である。特にファンにはすすめたい。
*1:『時の砂』の番外編です。