地球人のクローンで構成されている特殊部隊に新規に加入したジェレド・
ディラックは、人類を裏切りエイリアン種族と手を結んだ天才科学者ブーティンのクローンだった。軍の上層部は、ブーティンが何を狙っているのか探るべく、彼にブーティンの記憶を移植するためジェレドを作ったのだが、今のところその成果は出ていない。そして人類には危機が迫っていた……。
『老人と
宇宙』に続くシリーズ第2作である。今回の主人公はクローンのジェレドであり、最終局面でもせいぜい生後数ヶ月であり、全く「老人」ではない。今回最大の特徴は、前作でも主要登場人物として出て来たクローン兵が、更に掘り下げられて描かれることであろう。新兵の養成・教練が結構なページ数をかけて描かれ、普通の人間との違いと、それでも紛れもなく人間的な部分が浮き彫りになる。さらに今回は、宇宙で人類が置かれた立場がよりはっきりするなど、《世界観》ももっとはっきりしてくる。語り口も相変わらず快活で、リーダビリティも高く、波乱万丈な展開も面白い。クライマックスでのあざといまでの演出は退潮しているが、まずは良質なエンターテインメントと言えるだろう。今回もおすすめです。