耳をふさいで夜を走る/石持浅海
- 作者: 石持浅海
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2008/06/17
- メディア: 単行本
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登場人物が全員正義や倫理を標榜しつつも、誰一人、何一つマトモな言動をとらない。それどころか、地の文も視点人物の内面が直接描かれているため、一行たりともマトモなことが書かれていないのである。誰も彼もがのべつまくなしに、明らかにおかしい。これは凄い。
石持浅海の作品に出て来る「倫理」を気味悪がる意見はこれまでも非常にしばしば見られたが、『耳をふさいで夜を走る』は間違いなくその頂点に立つ作品である。まさに黒石持全開、ここまで気色悪い300ページは史上稀に見る。ミステリ的な仕掛けはまずまずといったところだが、イヤ話としての印象は本当に強烈である。好事家には強くおすすめしたい。