時の眼/アーサー・C・クラーク&スティーヴン・バクスター
- 作者: アーサー・C.クラーク,スティーヴンバクスター,Arthur C. Clarke,Stephen Baxter,中村融
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/12/01
- メディア: 単行本
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地球外知性体またはその先鋒であるらしい謎の《眼》の超科学のため、通常あり得ない状態になった地球を舞台に、壮大な歴史の“IF”が繰り広げられる。バビロンを巡って、東西二大征服者、アレクサンドロスとチンギスが激突する――というのは、なかなかに燃える設定である。これを19世紀と21世紀のテクノロジーがサポートし、ついでに傍らには猿人がいたりするなど、シチュエーション的には非常に面白い。作り込みも悪くない。モンゴル側の考証が甘いのは一モンゴロイドとして気になるが、シミュレーション小説として高いクオリティを誇っているといえよう。
しかしSFとしてはかなり脆弱である。科学的ギミックがあまりないのは話の内容(山場がマケドニア兵vsモンゴル兵)からして当然なのだが、終結がグダグダなのは言い訳がきかない。作者がクラークとバクスターであることに鑑みれば不満の残る出来栄えだ。クラークを象徴する《壮大なランドスケープ》がないのも残念である。もっとも本書には続編があるため、ここら辺は割り引いて考えるべきかも知れない。というわけでその続編『太陽の盾』を近い将来読んでみたいと思う。