ステップ/香納諒一
- 作者: 香納諒一
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2008/03/19
- メディア: 単行本
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時間SFの要素を使った、ハードボイルド風味のサスペンスである。弟分(結構ベタ)と親友と、惚れた女を救うため――という浪花節成分が含まれているが、洗練された筆致がある程度臭みを取っているので、幅広い層が受容可能と思われる。話の構造は、トラブル回避を試みる→失敗して死ぬ→過去に戻って復活、の繰り返しである。一種のリプレイものだが、死亡から復活までの時間が次第に短くなって来るので、一人称の主人公は復活したその瞬間から大慌てで対策をとらざるを得ない。しかし毎回、前回死亡時の問題を解決したと思ったら別の問題が発生し、主人公が死ぬことになってしまうのだ。難儀なことではあるが、この繰返しがある度に、主人公が巻き込まれたトラブルの全容が次第に判明してくる。ここら辺は構成力の見せ所であり、香納諒一はさすがにしっかりと物語を作っている。
ピンと張った緊張感、スピーディーな展開もいい。名手がその手腕を発揮した佳品と評価したい。