哀れなるものたち/アラスター・グレイ
- 作者: アラスター・グレイ,高橋和久
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/01/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『ラナーク』同様、終局的には《愛》を扱う物語である。一人(?)の女を巡る物語なのだから、より直裁に《恋愛》を扱った物語ということになるが、扱っているものは最終的により広範なものとなる。作中作の主人公が《公衆衛生官》を名乗っているように、本書は社会的な事物にも関心を寄せる――少なくともその余地がある。そしてその余地は、『哀れなるものたち』の終盤が近付くに従って有効活用されていく、と述べておこう。
本書はSFであるともファンタジーであるとも、そしてメタフィクション、ガチガチの純文学、いやいやこれはもう奇譚であるとも言えるが、無論そのようなジャンル分けは全く意味をなさない。『ラナーク』同様、リーダビリティも高く単純に、読んでいるだけで面白い。作者自身による挿絵も不思議な感興を高める、実にいい小説である。おすすめです。