藪枯らし純次/船戸与一
- 作者: 船戸与一
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2008/01
- メディア: 単行本
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
寂れ過ぎて後は死を待つばかりの疲弊した地方の温泉郷を舞台に、生き馬の目を抜く策謀と欲望が交錯する。村人の大半は老人だが、彼らもまた年甲斐もなく(いや老い先が短いからこそ?)、浅ましい煩悩を剥き出しにして物語を大いに盛り上げる。『藪枯らし純次』は高倉が一人称を務めており、最初は実にハードボイルドらしい風情で開始される。しかし、話が進むにつれて、全ての登場人物が次第に浮付き、純次が用意した粗暴なジャズの調べ、そして12歳の少女の妖艶なストリップ・ダンスに乗せられたように、狂気に取り憑かれていく。かくして中盤以降、物語は完全にハードボイルドの殻を破り、船戸与一にしか書き得ない、粗暴な獣性と狡猾な智謀が両立した、闇に溢れた熱い小説に転化していくことになる。歴史的背景を用意するのもこの作家らしい。
整然とした小説が好きな人には向かないが、本書で描かれる「破滅への驀進」はやはりこの作家にしか書き得ないものだろう。