ホームズのいない町/蒼井上鷹
ホームズのいない町―13のまだらな推理 (FUTABA NOVELS)
- 作者: 蒼井上鷹
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2008/03/19
- メディア: 新書
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ただし、本書のユーモアは黒いか嫌味ったらしく、登場人物もほぼ全員に癖がある。従って「親しみ」と言ったところでそれは「共感」に繋がらない。市井の安い事件を、等身大に描き、また読者にもそう見せることで、本書は人間の低俗さをまざまざと表現しているのである。
連作通しての完成度も高い。今回は、事件内容にバリエーションが利いており、一気に読んでも、似たような作品ばかり読まされているとの印象を抱かずに済む。ブラックな味わいのみ既存作品に比べて若干抑え気味だが、それ以外の点から言えば、『ホームズのいない町』は、現時点で蒼井上鷹の最高傑作ということになろう。広くオススメできる逸品である。