不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

流星の絆/東野圭吾

流星の絆

流星の絆

 有明功一・泰輔・静奈の三兄弟は、幼い頃、洋食店を営んでいた両親を何者かに惨殺される。14年後、美しく成長した静奈を餌に、三兄弟は、嫁を貰い遅れ始めた年齢層の男を相手に、詐欺をはたらくようになっていた。ある日、静奈はまたもや詐欺をはたらこうと、繁盛する洋食チェーン《とがみ亭》の御曹司・戸神行成に近付く。だが、行成の父・政行が考案したという《とがみ亭》のハヤシライスは――有明三兄弟の両親の店で出していたものと、全く同じ味がした。政行が三兄弟の両親を殺害し、レシピを盗んだのか? 三兄弟は行成を介して戸神家を探る。
 もはや演歌なタイトル、帯で展開の三分の二が堂々とばらされるなど、パッケージングには少々問題がある。しかし物語そのものは、高いリーダビリティと読者の感動を誘う要素によって成功が保証された、一気に読める良い娯楽小説となっている。展開には若干のご都合主義が付きまとうが、先述の高いリーダビリティにより、有無を言わさず読者を物語に引き込んでしまうのが、本書の最大の強みだろう。真相もなかなか面白いが、個人的には、事件の構造が登場人物にとって非常に皮肉なものになったというところに、東野圭吾一流の《悪意》を見た。