ロボット物語/スタニスワフ・レム
- 作者: スタニスワフ・レム,深見弾
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1982/03
- メディア: 文庫
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『宇宙創世記ロボットの旅』で神がかっていた部分は、訳者の労苦も凄まじいものであったろう言葉遊びをはじめ、やや後退している。皮肉や風刺の鋭さもより直線的なものになってしまい、わかりやすくなった反面、精彩を欠いているように思われた。しかしこれらはまああちらが世紀の大傑作だったからであって、寓話性の高さと文明に対する視線の厳しさは相当なものである。情報密度も相変わらず高い。しかしこの作品集が凄いのは、重厚な読み応えをそのままに、話の極大なスケールもそのままに、滅法楽しいユーモア小説に仕上げていることである。
スタニスワフ・レムという天才の頭の中身なんて、私如きではどうやっても「理解」なんてできるはずもなく、「解釈」なんてこともできるはずがない。ゆえに、私は本書を楽しく読むことにした。しかしその奥に、広大な思索と思弁の沃野(いや荒野か?)が広がっているのがひしひしと伝わってきて、震撼する瞬間も多々あるのだ。ユーモア小説でこういう体験ができるのは……やはりスタニスワフ・レムの重要な魅力の一つなのだろう。