ロジャー・マーガトロイドのしわざ/ギルバート・アデア
ロジャー・マーガトロイドのしわざ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1808)
- 作者: ギルバート・アデア,勝呂忠,松本依子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2008/01/11
- メディア: 新書
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2006年に発表された作品で、中身は黄金期本格へのオマージュに溢れている。「この屋敷で本の中のような密室殺人が起きるなんて!」と嘆きながら、登場人物たちはミステリミステリした事件に嫌々付き合うことになる。意気軒昂なのは、でしゃばりな女流推理作家のみで、彼女の存在が物語に喜劇的な雰囲気をもたらしている。また、節々には黄金期の巨匠たちへの言及が見られ、クラシック・ファンとしてはなかなか嬉しい。基本的にはパロディ色が非常に強く、ストーリー展開が一部の登場人物にとって結構ご無体なのは笑える。読みやすくて始終楽しいのも実にいい。
そして肝心のネタはバカミスでした。これは素晴らしい。08年の早川書房は初っ端からとんでもないもん出して来たなあという感じである。伏線がしっかりかつひっそり張ってあるのも高く評価したい。既視感のあるネタではあるが、非常に気持ちよく読み終えることが出来るのは、この「しっかりかつひっそり」がうまく利いているからである。下品ではない愉快な笑いを、本書はミステリ好きに必ずやもたらしてくれるはずだ。これ以上詳述できないのは残念だが、ミステリ・ファンには是非おすすめしたい。