不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

MM9/山本弘

MM9

MM9

 科学を無視する《怪獣》や《妖怪》が実在する世界。気象庁特異生物対策部は被害を最小限に抑え怪獣を撃滅すべく、自衛隊など関係各機関と協力し、今日も懸命?に活躍するのであった。
 五話構成で、最初の四編では専ら怪獣への対策を語られる。怪獣の類型が順に水中型、人型、飛行型、植物型と異なっており、それぞれの視点からの《現実的な対策》が見られるのが面白い。実際に怪獣が出現するような世界であれば、確かにこういう対応になるんだろうなあと思わせられる。しかしこの四編では、怪獣そのものは科学が通用しない不思議な存在とされており、物理学や化学など、既知の法則では彼らの存在そのものを説明できないのである。ここら辺はどうなのよ、と思っている時に最後の第五編がやって来る。ここで物語は趣を変え、《世界》の秘密に一気に踏み込むのである。神話と絡めた結果、ちょっと話が安手になったかなとは思うが、十二分に満足した。
 総じて質の高い娯楽小説に仕上がっており、読みやすいのもありがたい。広くお勧めしたい逸品といえよう。