不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

KIZU/ギリアン・フリン

KIZU―傷― (ハヤカワ・ミステリ文庫)

KIZU―傷― (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 シカゴで働く新聞記者カミルは、田舎町ウィンド・ギャップで発生した、少女が歯を抜かれて遺体が殺される連続殺人事件の取材を命ぜられる。だがウィンド・ギャップはカミルの故郷であり、彼女は母に反発してこの町を飛び出した過去を持っていた。それほどまでに母との仲がおかしくなったのは、カミルの妹の死をきっかけとした諍いゆえであった。そんな中で取材を始めたカミルは、やがて自らの肺腑を抉るような展開を見せる事件に、否応なく巻き込まれていった……。
 リーダビリティは高く、登場人物の造形もなかなかしっかりしていて感心した。なるほどこれはCWA賞のニ部門を制覇したのも納得である。展開が少々安易であること、何故そのような推理内容になるかがいまいちよくわからないのは欠点だが、総じて水準以上の佳作といえよう。次回作で、話をより重くするのか、それとも軽くするのかに注目したい(どっちに舵を切っても書けそうな人なので)。