進化の設計者/林譲治
- 作者: 林譲治
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/09/01
- メディア: 単行本
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トンでも理論は出て来るが、トンでもな存在が実際に顔を出したりはしない話である。近未来でのビッグプロジェクトを舞台として、ネットワークと生命の関係、そして進化に関する考察が炸裂する。規模は大きいが、物語の構成は基本的に冒険小説であり、大掛かりな陰謀と緊張感に満ちた展開がたっぷり楽しめる。ハードウェア面での近未来SF的な設定がてんこ盛りなので、ガジェットに淫する人にもそれなりに受けるだろう。粗筋で紹介した三本の軸の交錯は、一部若干のご都合主義が見られるが、小説に厳密性を強く求めなければあまり気になるまい。
というわけで、総合的には非常に楽しめるエンターテインメントSFとして高く評価したい。広げた風呂敷と人間ドラマの回収に多少もたついているのが残念。
最後に。猫が可愛かったり怖かったりするのは正直反則だと思います。人類はなぜかくもぬこに弱いのか。