不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

遠まわりする雛/米澤穂信

遠まわりする雛

遠まわりする雛

 古典部シリーズ第四弾にして、初の短編集である。日常の謎をずらり7編並べた作品であるが、ハレかケかという観点からは確実にハレの舞台設定のものが多い。それらの質はさすが米澤穂信、ミステリ的にしっかりと締まっていて素晴らしい。ガチガチの論理性や破格のトリックがあるわけでもないが、推理の楽しみについて押さえるべきところを押さえており、ミステリ・ファンの広い層にアピールすることだろう。個人的には、タイトルと粋なオチが関連が美しい「やるべきことなら手短に」、校内放送から妄想と紙一重の推理を繰り広げる「心あたりのある者は」がお気に入りである。
 でも今回は全般的に、この作家が得意とする「苦さ〜ほろ苦さ」は希薄だなあ、と思っていたら最後の表題作でぶちかましてくれました。というかこのシリーズでこれを明示するのか! 今後の展開が気になって参りました。二年生に上がったホータローたちが古典部が新入生を募るか/募ったとしても入れるのかも含め、このシリーズは益々注目である。