ベルリン国立歌劇場
- ペーター・マッティ(ドン・ジョヴァンニ)
- アンナ・サムイル(ドンナ・アンナ)
- パヴォル・ブレスリク(ドン・オンターヴィオ)
- クリストフ・フィシェッサー(騎士長)
- アンネッテ・ダッシュ(ドンナ・エルヴィーラ)
- ハンノ・ミューラー=ブラッハマン(レポレロ)
- アレクサンダー・ヴィノグラトフ(マゼット)
- シルヴィア・シュヴァルツ(ツェルリーナ)
- ピョートル・ベチャーラ(歌手)
- トーマス・ラングホフ(演出)
- ダニエル・バレンボイム(指揮)
安定感ある演奏で満足しました。一昨年、モネ劇場来日公演の《ドン・ジョヴァンニ》に比べるとマイルドで、とんがった迫力にも欠けましたが、まあこれはこれでグランド・マナーの良い演奏でしょう。歌手もそれぞれに個性が際立っていて良かったと思います。オペラグラスを使用していないので詳しくはわかりませんが、女性陣には美人も多く、こういう言い方はアレですが違和感を覚えさせない配役でした。
演出は、ドン・ジョヴァンニをやたら飛び出しナイフを振り回すならず者として表現。その他の登場人物も(騎士長を除き)動く、動く、動く。狂言回し的な役割を担うレポレロは、積極的に笑いを取りに来ていました。そして第二幕の宴会準備シーンでは、刺身を持ってバレンボイムが舞台袖から出て来た! お前指揮しとったんちゃうんかい! そして舞台上で本当に刺身を食いだすマッティ、バレンボイム、ブラッハマン。箸の使い方に難儀しておられました。どうやらこの場面、公演日によって内容が違った模様ですな。この後、ドン・ジョヴァンニがレポレロに「お前つまみ食いしたな」と詰め寄る場面があるんですが、ここでは本当にレポレロ役のブラッハマンは食い物を咀嚼しているという按配。いやー、笑わせていただきました。
このオペラは、シリアスな要素とお笑いが奇妙に混在しており、演奏も難しいし聴く方も疲れるんですが、この点では陰惨な内容を含む落語に似ているかも。――なんて考えるのは『道具屋殺人事件』を最近読んだからだろうか。