悪魔はすぐそこに/D・M・ディヴァイン
- 作者: D.M.ディヴァイン,D.M. Devine,山田蘭
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/09/22
- メディア: 文庫
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抜群のリーダビリティを誇る一冊。過去のスキャンダルと現在の殺人事件が交錯し、もつれた人間関係が次第に明らかになってくる様は本当に素晴らしい。登場人物の内面にかなり踏み込むのもポイントで、優柔不断なピーター、その恋人で結構即物的なルシール、ピーターへの淡い想いを少々残しつつも法学部長ラウドンに惹かれていくカレン(ルシールのルームメイト)など、主要キャストはもちろん、端役に至るまで性格が非常に綿密に描かれている。だからこそ「もつれた人間関係」がリアルに読者の前に立ち現れるし、感情移入させることでリーダビリティも高くなるのだ。こういった手法からは、本格ミステリといってもガチガチなそれではなく、サスペンス・タッチも交えたより自由な形式の本格に近いとの感触を持った。……しかしこれが孔明の罠だったとは! とんでもない大ネタはないが、細かいところまでよくできていて感心しました。先述のとおりリーダビリティも高いので、本格ファンのみならず、広くおすすめしたい逸品です。